年金繰下げ判断|65歳vs70歳vs75歳 損益分岐何歳?
📅 この記事は 2026年6月時点の情報をもとにしています(最終更新日に連動)
📖 もくじ▼

どうも、ちちまるです。今日は20年後の自分への遺言にもなる「年金、いつから受け取る?」を65歳/70歳/75歳の3パターンで比較整理します。
- 年金は60〜75歳の間で受給開始年齢を選択可能(繰下げ=増額の請求は66歳以降)。繰下げで月0.7%増・最大84%増(75歳開始)。繰上げで月0.4%減・最大24%減
- 損益分岐年齢は65歳開始 vs 70歳開始で約82歳(81歳11ヶ月)・65歳 vs 75歳で約87歳(86歳11ヶ月)。長生きするほど繰下げ有利(分岐点より早く亡くなると総額は減る)
- ただし社会保険料増・課税所得増・遺族年金は繰下げ対象外等の落とし穴あり。「単純な累計受取額比較」だけで判断するとミスる
💡 繰下げ受給って?本来65歳から受け取る年金を、申請して70歳や75歳まで遅らせる仕組み。遅らせた月数×0.7%が増額され、その増額率は生涯続く。逆に60歳まで早める「繰上げ受給」は月0.4%減。
📊 グラフの読み方:65歳開始と70歳開始の累積受取額が逆転するのは約82歳(81歳11ヶ月)。それ以前に亡くなれば65歳開始が有利、それ以後まで生きれば70歳繰下げが有利。日本の平均寿命(男81歳・女87歳)から見ると、ほぼ五分五分の判断です。なお図で75歳開始(約4,970万)が70歳開始(約5,100万)より少ないのは、90歳までの累計では受け取る年数が短いため。もっと長生きすれば75歳開始が逆転します。
繰下げの基本ルール
⏰ 繰下げ受給の基本
66歳〜75歳まで月単位で選択可能
繰下げ月数 × 0.7%(70歳=+42%、75歳=+84%)
一度決めた増額率は生涯継続(亡くなるまで)
65歳時点で「請求しない」or 後日「繰下げ請求書」提出
📅 繰上げ受給(参考)
60歳〜64歳
繰上げ月数 × 0.4%(60歳=-24%)
減額率も永続・障害年金・遺族年金との併給制限あり
損益分岐年齢の計算
シンプルな損益分岐式は 「基準受取期間(5年)÷ 増額率(0.42 or 0.84)+ 65」です。
- 65歳開始:月15万円 × 12 × n年
- 70歳開始:月15万円 × 1.42 × 12 × (n-5)年
- 分岐点:15n = 21.3(n-5) → 6.3n = 106.5 → n ≈ 16.9(つまり65+16.9 ≈ 81.9歳=81歳11ヶ月で逆転・日本年金機構等の試算と整合)
同様に 65歳 vs 75歳では約87歳(86歳11ヶ月)が分岐点。長寿傾向の現代では、70歳繰下げは長生きするほど有利ですが、「確実に得」ではなく「分岐点より長生きすればプラス」という期待値の話です(早く亡くなれば総額は減る)。
繰下げの落とし穴|額面増だけ見るとミスる3点
⚠️ 落とし穴①:社会保険料・税金が増える
年金額が増えると国民健康保険料・介護保険料・所得税・住民税も増える(75歳以降は国民健康保険ではなく後期高齢者医療制度=75歳以上が入る公的医療保険)。70歳繰下げの実質手取り増は額面+42%に対しおおむね+30〜35%程度に目減りすることが多い。
※前提:年金額年178万→253万円のモデルケース、所得税5%・住民税10%・国民健康保険料約8%相当の概算。実際は加入保険・他所得・自治体により変動。
⚠️ 落とし穴②:遺族厚生年金は繰下げ対象外
遺族厚生年金(=会社員だった人が亡くなったとき、残された家族が受け取れる年金)には、本人の繰下げによる増額は反映されません(死亡した人の老齢厚生年金の「本来額」の3/4で計算)。つまり夫が繰下げても繰下げなくても、妻が受け取る遺族厚生年金額は変わりません。注意すべきは別の点で、夫が繰下げ「待機中」(年金を受け取らず先送り中)に亡くなると、本来65歳から受け取れたはずの増額メリットがゼロになり、未支給分は増額なしの本来額でまとめて受け取る形になります。配偶者の生活も考えるなら「夫婦どちらか1人だけ繰下げ」「待機を長くしすぎない」のが現実解です。
※遺族厚生年金は2025年の年金制度改正で2028年4月から見直し(原則5年の有期給付化・男女差是正)が予定。30代世代は受給時に制度が変わる可能性が高く、現行ルール前提で長期判断しないこと(出典:厚生労働省 年金制度改正)。
⚠️ 落とし穴③:加給年金は繰下げ対象外+繰下げ待機中も支給停止
加給年金(=年下の配偶者がいる間にもらえる“家族手当”のような上乗せ。年約40万円・配偶者が65歳未満の間)は繰下げの増額対象外で、本体の老齢厚生年金を繰下げ請求すると加給年金も支給停止。夫が年上+専業主婦の妻の家庭で繰下げを選ぶと、配偶者が65歳になるまでの加給年金(数年分=100-200万円相当)を逃すリスク。夫年上世帯は損益分岐に重大に影響(出典:日本年金機構 繰下げ受給)。
⚠️ 落とし穴④:65歳〜の生活費を別途用意する必要
繰下げ中は年金収入ゼロ。5年(70歳まで)or 10年(75歳まで)の生活費を別途用意できる人だけが選べる戦略。退職金・iDeCo・NISA運用資産・パート収入等で繋ぐ前提。
パターン別おすすめ判断
✅ 70歳繰下げ向き
65〜70歳の生活費を別途確保できる(退職金・iDeCo・NISA・パート)
男性85歳以上・女性90歳以上を想定できる健康状態
配偶者の年金or自分の遺族厚生年金で配偶者の生活が成立
⚪ 65歳開始向き(王道)
65歳時点で生活費に年金が必要・健康に不安あり
早期からの確実な現金収入・遺族年金も標準額
⚠️ 60歳繰上げ向き(限定的)
健康上の問題で就労困難・長生きの見込みが極めて低い
月0.4%減×60ヶ月=24%減が生涯継続。安易な選択は危険
我が家の方針|まだ約30年先だが「FIW志向」と整合
我が家(夫36歳・妻36歳)は受給開始までまだ約30年。とはいえ方針は決めています:
- 夫:65歳開始予定(または70歳繰下げ)。65歳時点でNISA・iDeCo運用資産1,500万以上を達成していれば70歳繰下げに切替検討
- 妻:65歳開始(繰下げなし)。夫の遺族厚生年金との合算で生活費確保
- 合算戦略:夫婦どちらか1人だけ繰下げ・もう1人は65歳開始の「ハイブリッド」
これは連載「残業を断れる父になれ」で書いた「FIW(Financial Independence at Work=働きながら、残業や仕事を選べる経済的な余裕をつくる考え方)」と整合する考え方:「繰下げできる選択肢を持つこと」が大事で、実際に繰下げるかは65歳の状況次第。
NG行動3つ|繰下げ判断で後悔しないために
⚠️ 🚫 NG①:「みんな繰下げした方が得」と一律に決める
SNSや一般メディアの「繰下げ推奨」記事は、健康・家族構成・他収入を考慮していない。個別事情で正解は変わる。年金事務所での個別試算が鉄則。
⚠️ 🚫 NG②:繰下げ中の生活費計画を立てずに決断
「70歳まで繰下げよう」と思っても、65〜70歳の5年間で生活費約1,500〜2,000万円(夫婦)が必要。退職金・iDeCo・NISAでの5年分準備があるか必ず逆算。
⚠️ 🚫 NG③:配偶者の年金状況を考慮しない
夫だけ70歳繰下げにすると、夫が60代で亡くなった場合に遺族厚生年金が「繰下げなし」額で計算され、配偶者が想定より少ない年金で生活することに。夫婦合算で判断する。
💡 老後にいくら必要か、ゴールから逆算するなら:年金の繰下げ・取り崩しは「目標の資産額」から考えると判断しやすくなります。資産1000・3000・5000万|子育て家計の逆算プランもあわせてどうぞ。
まとめ:「繰下げできる選択肢」を持つことが大事
📝 この記事の要点
- 年金繰下げは60〜75歳で選択可能(繰下げ=増額は66〜75歳)・月0.7%増・最大84%増(75歳開始)
- 損益分岐は65歳vs70歳=約82歳(81歳11ヶ月)・65歳vs75歳=約87歳(86歳11ヶ月)
- 長寿(90歳以上)が見込めるなら70歳繰下げが期待値高い
- 落とし穴:社保・税金で実質手取り増は+30〜35%/遺族年金は繰下げ対象外/65歳〜の生活費別途必要
- 夫婦合算戦略:「どちらか1人だけ繰下げ」がリスク分散の現実解
- 我が家は30年先・FIW志向と整合した「選択肢を持つ準備」を継続
- NG:一律繰下げ/生活費計画なし/配偶者状況無視
- iDeCo月5,000円〜満額で60代以降の取崩可能資産を確保
- NISA月3万円〜で65歳前の生活費5年分(1,500万円目安)を準備
- ねんきんネット登録で毎年の年金見込額をチェック(生年月日と基礎年金番号で5分)
これら3つができていれば「65歳開始 or 70歳繰下げ」を自由に選べる状態になります。

年金繰下げは「30年先」と思いがちですが、30代のうちにiDeCo・NISA・退職金準備をしておくと選択肢が広がるのがポイント。
- 年金繰下げ受給:日本年金機構「年金の繰上げ・繰下げ受給」
- 老齢厚生年金の計算:日本年金機構「老齢厚生年金」
- 遺族厚生年金:日本年金機構「遺族厚生年金」
- 令和5年簡易生命表(平均寿命):厚生労働省「簡易生命表」
- 年金繰下げの社会保険料への影響:厚生労働省「年金の受給」
- 公的年金と税金:国税庁(公的年金等の課税)
⚠️ 注意
本記事は年金繰下げの一般情報を目的としており、個別の受給判断アドバイスではありません。年金額・健康状態・他収入により最適解は異なります。具体的な相談は年金事務所・社労士・FPへ。